鍼灸師から府立図書館司書に 全盲のハンディ克服し61倍の難関突破 整形外科勤務後に猛勉強 後進に職域拡大の道拓く |
写真説明:大阪府立図書館で司書として勤務する杉田正幸さん |
この春、全盲の図書館司書が誕生した。大阪府立中央図書館(東大阪市)に司書として採用された杉田正幸さん(二九)は元鍼灸師。全盲のハンディを乗り越え競争率六一.三倍の一般選考を勝ち抜いた。大阪府が全盲の司書を採用するのは初めてで全国でも貴重なケース。
杉田さんは埼玉県加須市の出身。先天性の弱視で中学の時に失明した。埼玉県立盲学校を卒業後、鍼灸師として整形外科に勤務したが司書を目指して筑波技術短大で情報処理を学んだ。さらに近畿大学の通信制でも学び、二十数冊の参考書をボランティアに点訳してもらうなどして司書資格を取得。
研修期間を終えた杉田さんは四月十四日から正規職員として司書の業務をスタート。現在は視覚障害者を対象に朗読で本の内容を伝える閲覧第三課対面朗読室に勤務している。
「司書として点字関係の業務だけでなく一般の図書館業務もこなしていきたい」ど抱負を語る杉田さんは、「現在は晴眼者でも就職が難しい時代で、盲学校を卒業しても就職先は少ないでしょう。また、視覚障害者の就く職種は人の入れ替わりも少ないため、なお厳しい状況です。私達には情報障害という壁があるので情報のデジタル化に期待しています。録音図書の国際基準であるDAISY(デイジー)などがもっと一般化すれば視覚障害者が活躍できる場も広がるのではないでしょうか。私は鍼灸師を経て司書という職業を選択しましたが、他の職種にも視覚障害者が進出するためには誰かが先駆者として道を開拓する必要があると思います」と、視覚障害者の職域拡大について語っている。
杉田さんのチャレンジ精神に勇気を得た後進たちが、今後はより多くの職域に進出する時代が来るだろう。
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